養育費の支払額の増減が発生するケースとは?
養育費は、婚姻費用同様、失業・病気・事故などにより父または母の経済状態に変動があったり、子の教育費用が増加したなど、やむを得ない事情の変更がある場合に増減が認められます。
ここでは,事例・判例を交えて養育費の支払額に変動が生じたケースについて解説します。
東京高裁平成10年4月6日決定事例(判例)
本件は、離婚の際に、合意により一括して養育費の支払いがなされたのちに、事情が変わったとして養育費の支払いが求められたものです。
【事実】
妻と夫は、昭和51年5月に婚姻し、昭和54年8月に長男(事件本人)が生まれました。妻と夫は、昭和60年11月に調停離婚しました。その際に、夫は妻に対して長男が成人に達するまでの養育費一括金1000万円を離婚時に支払い、将来相互に金銭上の請求をしない旨の合意をし、合意した金額を支払いました。
妻は、離婚後短期間稼働したが、心身の状況が思わしくないことから就労状況が安定せず、平成元年9月頃から家業の美術商を手伝っていましたが、平成6年6月に父親が死亡してから、家業からの収入もなくなり、夫から支払われた金額もほとんどなくなりました。
妻は、夫に対して、平成7年4月以降の養育費を求める調停申立てをし、調停が不成立となり本件審判に移行しました。
【判旨】
「妻としては、事件本人を私立学校と学習塾に通わせた場合には、高等教育を受ける以前に夫から支払われた養育費を使い尽くすことは当初から容易に予測可能であったと認められるのであり、これを補うためには、妻が自ら稼働して養育費を捻出するか父親からの援助を得ることが必要であったと考えられる。
しかし,妻は離婚後就労状況が安定していないし、家業は父親の存命中から不振続きであったから、これらによって養育費を補てんすることは当初からあまり期待できない状況にあったと認められる。
以上の事実によれば、前記調停成立後にその内容を変更すべき事情の変更が生じたと認めることはできない。
判例・事例のまとめ
本件では、事情の変更が認められず養育費の支払請求が認められませんでした。
しかし,1000万円の一括払いは、事件本人が成年に達するまでの養育費として支払われたものであるので、事件本人が成人後の大学の授業料等の扶養料を請求することは考えられます。
離婚事例・判例ラボ編集部
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