第三者機関の立ち合いの下の面会交流が認められるのはどのような場合か?
夫婦間の信頼関係が壊れている場合には、面会交流を審判で命じても、実際にはその実施が困難である場合もあります。そのような場合には、裁判所は、面会交流の実施を円滑にするため、第三者が関与して面会交流を行わせることを命じることがあります。
ここでは事例・判例を交えて第三者機関の立ち合いの下で面会・交流が許されたケースについて説明していきます。
東京高裁平成25年6月25日決定事例(判例)
本決定は、妻が夫による子の連れ去りなどを懸念している場合に、第三者機関の立ち合いの下の面会交流を命じた事例です。
【事実】
夫と妻は2001年、婚姻し、2004年、子どもがうまれました。妻が職場復帰した後も、保育園の送迎は妻が行っていました。その後、夫と妻は不仲となり、2011年、妻が子を連れて別居 しました。
同年、妻は、夫から言葉による虐待を受けていたとして、離婚調停を申し立てま したが、不調となり、2012年、離婚訴訟を提起しました。同年、妻が医師からPTSD症状を伴う適応障がいとの診断を受けています。夫から子との面会交流の調停を申し立てました 。
原審は、妻が直接、夫と顔を会わせたくないので、第三者機関に仲介してもらって面会交流 を実施することとしたいと述べ、夫もこれを拒まないと述べ、子も第三者の立会いを望ん でいたことから、第三者機関立会いの下での面会交流を命じました。
しかし、夫は回数や内容および第三者機関の立会いに不服で、妻も回数減を求めて、それぞれ抗告しました。
【判旨】
「面会交流を子の福祉に適う形で継続していくためには、同居親の協力が不可欠であり、面会交流の実施に関して、別居親と同居親との間に信頼関係が形成されていることが必要である。
……現時点においては、当事者間に離婚をめぐる紛議が係属しており、また、妻は、夫から別居前に精神的な虐待を受けたと主張したり、夫による子の連れ去りを懸念するなど、当事者間の信頼関係が失われている状況にある。
……このような状況を考慮すると、夫と子の面会交流を早期に開始し、正常化していくためには、当初は、妻の懸念にも配慮して、第三者機関の立会いという制限された方法で、回数も控えめにして面会交流を開始するのが相当である」として、妻は、本決定確定後、2か月に1回、午前10時から午後6時までの時間枠内で、初回は1時間、2回日以降は4時間を限度として、公益社団法人等の第三者機関の立会いの下、面会交流を行うことを認めなければならないとした。
判例・事例のまとめ
他の判例には、弁護士の付き添いを条件にするものや、家族問題を専門に行う民間機関のスタッフの立ち合いを命じるものもあります。
なお、本決定は、本決定は、第三者機関利用の費用は、子の福祉のために行われることから、夫と妻が2分の1ずつ負担するのが相当としました。
離婚事例・判例ラボ編集部
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