裁判31年2月19日 事実と判旨
事実
1994年に結婚した夫妻の妻が、2009年から職場の男性と不倫。
10年5月に夫が知り、同じころ不倫関係は解消された。夫妻は15年2月に離婚したが、夫が同年11月、不倫相手の男性に対して慰謝料など約500万円を求めて提訴。
判旨
二審の東京高裁は不倫相手の男性に対し、198万円の支払いを命じる判決を下した。
しかし、最高裁は「不倫した第三者が、直ちに当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない」と判断。
「特段の事情がない限り、不貞行為をした第三者に離婚に伴う慰謝料を請求はできない」として、夫が逆転敗訴した。
離婚時の精神的苦痛に対する慰謝料を、別れた配偶者の過去の不倫相手に請求できるかが争点
離婚の慰謝料を不倫相手には請求できないとの初判断を示した19日の最高裁判決は、これまであいまいな部分もあった不倫慰謝料と離婚慰謝料の性質の違いを明確に判示した形だ。
https://www.sankei.com/affairs/news/190220/afr1902200014-n1.html
https://www.sankei.com/affairs/news/190220/afr1902200014-n1.html
争点となったのは(1)請求権の時効(3年)が経過しても損害賠償を請求できるか(2)不倫行為の慰謝料ではなく、離婚の慰謝料を請求できるか-。原告側は不倫が原因の場合は離婚成立時から時効が起算されると主張。被告側は不倫を知った時点からだとし、3年以上が経過しているため原告の慰謝料請求権は消滅しているなどと反論していた。
不貞(不倫)と離婚の慰謝料請求権は別物?
不貞が離婚原因による慰謝料
こちらはわかりやすく、配偶者が不貞行為をしたこと自体に対する慰謝料です。そして、不貞は離婚の原因となり得る行為(民法770条1項1号)ですのでそのような行為をしたこと自体が不法行為にあたり慰謝料請求の対象となります。
この場合の認められる慰謝料は「不倫をされたこと自体に対する精神的苦痛への慰謝料」となります。
離婚自体に対する慰謝料
こちらは配偶者の不貞行為の結果、離婚せざるを得なくなったことに対する慰謝料となります。
不貞は離婚の原因となり得る行為(民法770条1項1号)ですが、まさに不倫によって離婚に至り、夫婦関係が破壊されてしまったことに対する慰謝料請求となります。
この場合に認められる慰謝料は「婚姻関係を破綻させ離婚に至らしめられたという精神的苦痛に対する慰謝料」となります。
消滅時効(不法行為は3年で消滅、民法724条) の違い
不貞行為による慰謝料請求権の時効とは?
不倫をされた側の配偶者が、「損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」時効によって消滅すると規定されています。そのため、不貞行為の慰謝料請求権は「不倫していることが判明してから3年」となります。
離婚自体の慰謝料請求権の時効とは?
「実際に離婚したときから3年」で時効になる。
コメント
離婚時点で不倫発覚から3年以上経過しているので、上記記載のとおり,不貞が離婚の原因となった慰謝料は消滅時効にかかっています。
しかし、原告は、「不貞のせいで離婚に至った」と主張を行い,離婚時から3年の消滅時効になる離婚自体の慰謝料を不倫相手に請求しました。
最高裁の判断では、「離婚自体慰謝料が請求できるのは基本的には配偶者に対してだけであり、夫婦関係を破壊させようとするなど、家に乗り込んだり、しつこく電話行なったなどの特段の事情があるなら、例外的に不倫相手にも離婚自体慰謝料を請求できるケースも存在するが、今回のケースでは、特段の事情がなく、不貞が離婚の原因となった慰謝料は消滅時効になっているため、被告男性に対して離婚自体慰謝料は請求できない。
という請求棄却判断を下しました。
今回の判例においては「離婚の慰謝料は不倫相手に原則請求できず」という最高裁が初めて出した判断であったため、この事例が基軸となる可能性がある点でおいては画期的な判決だったと思います。
離婚事例・判例ラボ編集部
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