有責配偶者とは?
有責配偶者とは、婚姻関係を継続できない状況。つまり離婚の原因を作り、結婚生活を破たんさせた配偶者のことをいいます。
結婚生活を破たんさせる行為の例は、不倫をしたり、暴力をふるったりといったことが挙げられます。
原則的には、有責配偶者が自ら離婚したいと請求することは、認められることはありませんが、例外的に認められるケースがあります。
果たして,その例外はどのようなケースがあるでしょう?
例外があるケースとは?
有責配偶者からの離婚請求が認められるケースは、別居期間の長短、未成熟子の有無、精神的・社会的・経済的負担の大小など様々な事情を考慮して判断されます。
主には,以下の3つの条件を満たす必要があるといわれています。
- 夫婦の別居生活が有責配偶者と当事者間の年齢及び同居期間と比較して、かなり長期間に及んでいること。
- 有責配偶者との間に未成熟の子供が存在しないこと。
- 離婚される側が離婚により精神的、社会的、経済的に非常に苛酷な状況におかれることになるなど、離婚請求を認めることによって大きなダメージを受けるような事情がないこと。
最高裁判決 平成16年11月18日
本判例は、別居期間2年4か月、7歳の子がいる場合に、有責配偶者からの離婚請求を認めないとしたものです。
事実
夫と妻は、平成6年12月に婚姻し、平成8年3月に長男が生まれました。
夫は税務署に勤務しており、夫は、遅くとも平成12年7月ころには、Aと性関係にあったようであり、平成12年10月初めころ、夫は、突然妻に対して「好きな人がいる、その人が大事だ」「二馬力で楽しい人生が送れる」「女の人を待たせている」などと言って、離婚を申し入れました。
その後夫と妻間にほとんど会話がなくなり、夫は平成13年6月に家を出て一人暮らしをはじめ、以後別居生活が続いています。夫は、別居後妻に対し、毎月生活費として8万円を送金しています。
夫は、妻に対して民法770条1項5号に基づき本件離婚請求訴訟を提起した。
判旨
①妻と夫との婚姻については民法770条1項5号所定の事由があり、夫は有責配偶者であること
②妻と夫との別居期間は、原審の回頭弁論終結時(平成15年10月1日)に至るまで約2年4か月であり、双方の年齢や同居期間(約6年7か月)との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと
③妻と夫との間には、その監護、教育及び福社の面で配慮を要する7歳(原審の口頭弁論終結時)の長男(未成熟の子)が存在すること
④妻は、子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり、離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されること
上記が明らかである。以上の諸点を総合的に考慮すると、夫の本件離婚請求は、信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず、これを棄却すべきものである。
判例・事例のまとめ
本判例は原審では、離婚請求が認められましたが、最高裁では認められませんでした。原審では、未成熟子の存在は考慮していませんが、子の福祉のために、未成熟子の有無は有責配偶者からの離婚請求の重要な判断要素になります。
この件に関しては、最高裁の判断が妥当ではないかと編集部では考えました。
離婚事例・判例ラボ編集部
最新記事 by 離婚事例・判例ラボ編集部 (全て見る)
- 浮気調査の方法をAIに聞いてみた~おすすめの方法や、注意点など~ - 2023年3月30日
- LINEのやり取りは浮気・不倫の証拠になる? - 2021年10月1日
- 同性との不倫も「不貞行為」 になる!?2021年3月16日報道あり。 - 2021年3月16日