夫と妻それぞれの名義の預貯金、著作権は財産分与の対象となる?
財産分与のうちでメインとなることが多いのが、清算的財産分与です。
これは「婚姻関係中に、夫婦間で協力して形成してきた財産については、その名義にかかわらず夫婦の共有財産と考え、離婚の際には、それぞれの貢献度に応じて公平に分配する。」という考え方です。
清算的財産分与に関しての詳しい説明はこちらをご覧ください。
財産分与の対象にはならない財産として、「特有財産」というものがあります。 特有財産とは、民法762条1項で「婚姻関係前から片方が取得していた財産」と「婚姻関係中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」と定義されていますが,夫、妻各人名義の預貯金、著作権は財産分与の対象となるのでしょうか?
実際の事例・判例をもとに説明をしていきます。
東京家審判平成6年5月31日
本判例は、各個人名義の預貯金、著作権は清算的財産分与の対象とならないとしたものです。
事実
妻と夫は、昭和37年1月に婚姻し、昭和42年9月に長女が生まれました。妻は童話作家、夫は画家でした。夫婦は、昭和55年ごろから互いの人生観、価値観の相違等から不仲となって家庭内別居の状態が続き、平成2年4月妻が家を出て別居し、平成3年6月に協議離婚しました。
その後、妻は、夫に対して、財産分与及び慰謝料等を請求しました。
判旨
清算的財産分与の対象となる財産について、預貯金、本件土地建物、双方の個人名義の著作権が考えられる。
しかし、妻と夫は、婚姻前からそれぞれが作家、画家として活動しており、婚姻後もそれぞれが各自の収入、預貯金を管理し、それぞれが必要な時に夫婦の生活費用を支出するという形態をとっていたことが認められる。
そのため一方が収入を管理するという形態、あるいは夫婦共通の財布というものがないので、婚姻中から、それぞれの名義の預貯金、著作物の著作権については、それぞれの名義人に帰属する旨の合意があったと解するのが相当であり、各個人名義の預貯金、著作権は清算的財産分与の対象とならない。
判例・事例のまとめ
本判例は、夫婦がそれぞれ各自の収入、預貯金を管理している場合には、各個人名義の預貯金を清算的財産分与の対象とならないとしました。
しかし、同様の判断が下されるかは夫婦間の生活など具体的事情により異なります。
このようなケースに遭遇した際は、まずは弁護士に相談し、見通しを把握することを編集部ではおすすめいたします。
離婚事例・判例ラボ編集部
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