婚姻中は家族の生活を守る為、夫婦で協力し財産を築きあげて生活をしてきたと思います。離婚時に,これまで夫婦が協力して築いた財産を清算・分配する必要があり,これを「財産分与」といいます。
今回は「財産分与」は財産の何が対象となり,どのような基準で決められるかなどを詳しく説明していきたいと思います。
財産とは
個人や団体などの所有している、金銭・有価証券や土地・家屋・物品などの金銭的な価値のあるものの総称のことを指します。
夫婦における財産は「共有すべき財産(共有財産)」と「そうではない財産(特有財産)」に大きく別けられます。
共有財産とは
婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産のことを共有財産と呼びます。主には婚姻中に取得・加入した下記項目が対象となるケースが多いです。
- 預貯金
- 家や土地などの不動産
- 自動車
- 有価証券
- 生命保険・教育保険
- 家財道具
- 貴金属・絵画・骨董品など
特有財産とは
特有財産とは、夫婦のどちらか一方に帰属している財産であり、他方の配偶者とは何の関係もなく形成された財産となります。
その代表的な例としては、下記になります。
- 結婚する以前から所有していた財産
- 婚姻期間中であっても相続などの特殊な理由で取得した財産
- 嫁入り道具
これらの財産は特有財産に該当します。
財産分与とは?
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。
財産分与においては、名義を問わず、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産は、共有すべき財産として、財産分与の清算対象となります。
上記は、民法768条1項によって相手方に対し財産の分与を請求することができると定められています。
e-Govより引用
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
財産分与は「名義を問わず、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産」は共有すべき財産として、精算・分与対象となると記載しましたが、上記以外のパターンなどがあるのか?財産分与の種類についても説明していきます。
財産分与の種類について
財産分与には、大きく分けて3つの種類があります。
- 清算的財産分与:夫婦が婚姻中に形成した財産の清算
- 扶養的財産分与:離婚により困窮する(元)配偶者の扶養
- 慰謝料的財産分与:傷つけたことに対する慰謝料として
清算的財産分与
財産分与のうちでメインとなることが多いのが、清算的財産分与です。
これは「婚姻関係中に、夫婦間で協力して形成してきた財産については、その名義にかかわらず夫婦の共有財産と考え、離婚の際には、それぞれの貢献度に応じて公平に分配する。」という考え方です。
対象となる財産は「共有財産」と「実質的共有財産」の2つとなります。対象外となるのは「特有財産」であり、結婚前から片方が有していた財産と、婚姻期間中であっても夫婦の協力とは関係無く取得した財産については、清算的財産分与の対象外です。
清算的財産分与は、離婚原因があるか否かによっては左右されず、あくまで2人の財産は公平に分けあうという考え方に基づくものです。そのため、清算的財産分与は、離婚原因を作ってしまった側である配偶者からの請求でも認められることになります。
扶養的財産分与
離婚をした場合に夫婦のどちらかが生活に困窮してしまうという事情がある場合に、その生計を補助するという扶養的な目的により財産が分与されることを「扶養的財産分与」といいます。
例えば離婚時に経済力に乏しい状況、または病気であったりする場合に認められることがあり、経済的に強い立場の配偶者が他方の経済的弱い立場の配偶者に対して、離婚後もその者を扶養するため一定額を定期的に支払うという方法が一般的です。
慰謝料的財産分与
離婚の際には、慰謝料の請求が問題になるケースが多々存在します。慰謝料は、財産分与とは性質が異なるものであり、両者は本来別々に計算して請求するのが原則です。
しかし、両方ともに金銭問題になるものであるため、慰謝料と財産分与を明確に区別せずにまとめて「財産分与」として請求をするケースがあります。この場合の財産分与は「慰謝料も含む」という意図があるので、慰謝料的財産分与と呼ばれています。
財産分与の対象とそうではないものとは?
財産分与の対象となるもの
共有財産の判断は、財産の名義ではなく実質的な判断によります。婚姻関係中に、夫婦間で協力して形成してきた財産は名義を問わず、財産分与の対象であり,これを「共有財産」と呼びます。
夫婦の共同名義で購入した不動産、夫婦の共同生活に必要な家具や家財などは財産分与の対象となります。また夫婦の片方の名義になっている預貯金や車、有価証券、保険解約返戻金、退職金等など婚姻関係中に夫婦が協力して取得した財産といえるものであれば、財産分与の対象となりえます。
財産分与の対象となる財産は、原則として「別居時」が基準となります。そのため、離婚前であっても、別居後に取得された財産については、財産分与の対象にはならないケースが多いです。
これは、たとえ婚姻関係が継続していたとしても、別居後については夫婦が協力して得た財産とはいえないため、財産分与の対象ではないという判断がされるためです。
財産分与の対象とならないもの
財産分与の対象にはならない財産に「特有財産」が存在します。
特有財産とは、民法762条1項で「婚姻関係前から片方が取得していた財産」と「婚姻関係中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」と定義されています。
「婚姻関係前から片方が取得していた財産」とは、たとえば、独身時代に貯めた定期預金などです。「婚姻関係中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」とは、たとえば、婚姻中に発生した相続によって得た不動産などが該当します。
ただし、特有財産でも、婚姻後に夫婦が協力したことによって価値が維持された場合や、婚姻後に夫婦が協力したことによって価値が増加した場合には、貢献度の割合に応じて財産分与の対象とされるケースもあります。
財産分与の割合はどのようにして決める?
財産分与の対象となる財産はどのような割合で財産を分配するのかについて説明します。
財産分与の割合は、財産の形成に夫婦がどのくらい貢献したのかという部分に着目して決めていきますが、分与の割合はそれぞれ2分の1が一般的ケースです。
専業主婦の方は夫が会社勤めで稼いだお金の財産分与に躊躇してしまうケースもあるかもしれませんが、たとえ夫だけに収入がある場合であっても、「夫は仕事を、妻は家事で夫婦生活を形成した」といえることから、夫婦の共有財産の割合は、原則的に2分の1ずつと考えられています。
財産分与の割合は具体的な事案ごとに異なるケースも存在するため、例外的に個別事情によって割合が修正されることもあります。
夫婦の片方の特殊な能力によって高額な資産形成がなされたような場合には、その特殊な能力等を考慮され、分与の割合が修正されることもあります。
まとめ
今回は財産とその分与方法について説明させていただきました。財産分与という言葉は知っていても、どこからどこまでの財産が分与の対象になるのかなどまでは知らない人も多く、どこまでが共有財産として財産分与の対象に含まれるのか、どこからが特有財産として分けずに持っておけるかという、「財産分与で分ける財産とそうでない財産の境」を知っておくと、後になって分けなくてもいい財産まで折半してしまったと後悔せずにすみます。
本記事が、皆様の公開のない財産分与に寄与できれば幸いです。
離婚事例・判例ラボ編集部
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